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(1)起立性調節障害(OD)

田中英高

  1. 概要
    ・たちくらみ、失神、朝起き不良、倦怠感、動悸、頭痛などの症状を伴い、思春期に好発する自律神経機能不全の一つです。
    ・過去には思春期の一時的な生理的変化であり身体的、社会的に予後は良いとされていましたが、近年の研究によって重症ODでは自律神経による循環調節(とくに上半身、脳への血流低下)が障害され日常生活が著しく損なわれ、長期に及ぶ不登校状態やひきこもりを起こし、学校生活やその後の社会復帰に大きな支障となることが明らかになりました。
    ・発症の早期から重症度に応じた適切な治療と家庭生活や学校生活における環境調整を行い、適正な対応を行うことが不可欠です。
    ・本学会編 小児起立性調節障害診断・治療GL(改訂版) (南江堂)を参照されたい。
  2. 疫学
    1) 有病率     軽症例を含めると、小学生の約5%、中学生の約10%。重症は約1%。不登校の約3-4割にODを併存する。
    2) 性差     男:女 1:1.5~2
    3) 好発年齢     10~16歳
    4) 遺伝・家族性     約半数に遺伝傾向を認める
  3. 成因
    1)起立に伴う循環動態の変動に対する自律神経による代償機構の破綻
    2)過少あるいは過剰な交感神経活動
    3)水分の摂取不足
    4)心理社会的ストレス(学校ストレスや家庭ストレス)が関与する。身体が辛いのに登校しなければならないという圧迫感が、さらに病状を悪化させる
    5)日常の活動量低下→ 筋力低下と自律神経機能悪化→ 下半身への過剰な血液移動→ 脳血流低下→ 活動量低下というdeconditioningが形成されるとさらに増悪
  4. 一般的にみられる症状
    ・立ちくらみ、朝起床困難、気分不良、失神や失神様症状、頭痛など。症状は午前中に強く午後には軽減する傾向があります。
    ・症状は立位や座位で増強し、臥位にて軽減します。
    ・夜になると元気になり、スマホやテレビを楽しむことができるようになります。しかし重症では臥位でも倦怠感が強く起き上がれないこともあります。
    ・夜に目がさえて寝られず、起床時刻が遅くなり、悪化すると昼夜逆転生活になることもあります。
  5. 合併症・併存症
    1)身体面:概日リズム睡眠障害(睡眠障害)、失神発作(けいれんを伴うこともある)、著しい頻脈
    2)心理・行動面:脳血流低下に伴う集中力や思考力の低下、学業低下、長時間臥床など日常生活活動度の低下、長期欠席
    3)発達障害やその傾向性を伴う学校不適応や不登校
  6. 診断方法
    1)立ちくらみ、失神、気分不良、朝起床困難、頭痛、腹痛、動悸、午前中に調子が悪く午後に回復する、食欲不振、車酔い、顔色が悪いなどのうち、3つ以上、あるいは2つ以上でも症状が強ければ起立性調節障害を疑います。
    2)鉄欠乏性貧血、心疾患、てんかんなどの神経疾患、副腎、甲状腺など内分泌疾患など、基礎疾患を除外します。
    3)新起立試験を実施し、以下のサブタイプを判定します。
    (1)起立直後性低血圧(軽症型、重症型)
    (2)体位性頻脈症候群
    (3)血管迷走神経性失神
    (4)遷延性起立性低血圧
    (近年、脳血流低下型、高反応型など新しいサブタイプが報告されているが、診断のためには特殊な装置を必要とする。)
    4)検査結果と日常生活状況の両面から重症度を判定する(ガイドラインを参照)
    5)「心身症としてのOD」チェックリスト(ガイドラインを参照)を行い、心理社会的関与を評価する。
  7. 治療
    1)疾病教育
    ・中等症や重症の多くは倦怠感や立ちくらみなどの症状が強く、朝に起床困難があり遅刻や欠席をくり返していますが、保護者の多くは、子どもの症状を「怠け癖」や、ゲームやスマホへの耽溺、夜更かし、学校嫌いなどが原因だと考えて、叱責したり朝に無理やり起こそうとして、親子関係が悪化することが少なくありません。
    ・本人と保護者に対して、「ODは身体疾患である、「根性」や気持ちの持ちようだけでは治らない」と理解を促すことが重要です。
    2)非薬物療法(日常生活上の工夫)
    ・坐位や臥位から起立するときには、頭位を下げてゆっくり起立する。
    ・静止状態の起立保持は、1-2分以上続けない。短時間での起立でも足をクロスする。
    ・水分摂取は1日1.5-2リットル、塩分を多めにとる。
    ・毎日30分程度の歩行を行い、筋力低下を防ぐ。
    ・眠くなくても就床が遅くならないようにする。
    3)学校との連携
    ・学校関係者にODの理解を深めてもらい、OD児の受け入れ態勢を整える。
    4)薬物療法
    ・非薬物療法を行ったうえで処方する(ミドドリン塩酸塩など)。薬物療法だけでは効果は少ない。
    5)環境調整
    ・子どもの心理的ストレスを軽減することが最も重要です。保護者、学校関係者がODの発症機序を十分に理解し、医療機関―学校との連携を深め、全体で子どもを見守る体制を整えましょう。詳細はガイドラインを参照のこと。
    6)心理療法
    ・詳細はガイドラインを参照のこと。
  8. 経過
    日常生活に支障のない軽症例では、適切な治療によって2〜3ヶ月で改善します。学校を長期欠席する重症例では社会復帰に2〜3年以上を要します。

  1. (1)起立性調節障害(OD):田中英高
  2. (2)過敏性腸症候群:土生川千珠
  3. (3)気管支喘息:赤坂徹
  4. (4)過換気症候群:小柳憲司
  5. (5)慢性頭痛(片頭痛、緊張性頭痛など):安島英裕
  6. (6)消化性潰瘍:竹中義人
  7. (7)心因性嘔吐:岡田あゆみ
  8. (8)非器質性視力障害:石崎優子
  9. (9)転換性障害:稲垣由子
  10. (10)心気症:氏家武
  11. (11)身体醜形障害:村山隆志
  12. (12)くり返す子どもの痛み:汐田まどか
  13. (13)身体化障害:二宮恒夫
  14. (14)その他の身体疾患による精神症状:藤本保
  15. (15)摂食障害:鈴木雄一
  16. (16)不登校の早期対応:村上佳津美
  17. (17)いじめ問題への対応:河野政樹

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