(4)過換気症候群

小柳憲司
長崎県立こども医療福祉センター小児心療科

1.病気の概要

自分が意図することなく発作的に呼吸が速くなり、それを止めることができないために血液が過度にアルカリ性に傾き、全身のさまざまな症状を示す症候群です。思春期~20歳代の女性に多くみられます。

2.病気の成り立ち

激しい運動や疲労、発熱などの身体的要因、あるいは不安、恐怖、怒り、敵意などの心理的要因が引き金となり、過換気発作(呼吸が速くなり止められない状態)が出現します。正常時は、呼吸(換気)によって血液中の二酸化炭素濃度が低下すると、脳の働きによって自然に呼吸が抑制されますが、心理的に不安定な状態では、そのような呼吸調節がうまく機能しないために過換気状態が続き、血液がアルカリ性に傾きすぎるため、さまざまな身体症状が出現します。また、それによって不安が高まり、呼吸運動がさらに促進されるという悪循環をきたします。

3.症状

過換気発作とともに、空気飢餓感(空気が吸えない感じ)、胸痛、動悸(ドキドキする感じ)、嘔気、嘔吐、手足のしびれ、けいれん、意識消失などのさまざまな症状を呈します。

4.経過

発作は一般に30分~1時間程度で消失し、経過は良好な場合がほとんどです。

5.治療(対応)

a.発作時の治療

意識的に呼吸を遅くする、あるいは呼吸を短時間こらえること で症状は改善します。患者さんは不安が強くなかなか呼吸を遅くすることができませんので、まずは患者さんをできるだけ安心させゆっくり呼吸するように指示します。<注意>かつて紙袋を口にあてていったん吐いた息を再度吸わせることで、血液中の炭酸ガス濃度を上昇させる方法(ペーパーバック法)がありましたが、この方法では血液中の酸素濃度が低くなりすぎたり、炭酸ガス濃度が過度に上昇したりする可能性がありますので、医療機関以外では行なうべきではありません。

b.非発作時の治療

病気の成り立ちについて詳しく説明し、対処法(紙袋の携帯、腹式呼吸などの呼吸法)を指導することで、発作に対する不安を軽減させます。それでも不安が高い子どもには、抗不安薬の服用を勧めることもあります。発作を繰り返したり、頻発したりする場合は、学校や家庭でのさまざまなストレスが関わっていることが多いため、カウンセリングを継続して行います。

注意点

身体疾患のうち、気管支喘息発作や糖尿病でも同様の過換気状態を呈することがあります。また、パニック障害やうつ病といった精神疾患を基礎にもち、その一症状として過換気症候群をきたす場合もあるので、発作を繰り返す子どもでは注意が必要です。

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