習癖異常(抜毛など)

1.概要

習癖異常(Habit Disorder)は、爪かみ・指しゃぶり・抜毛・皮膚むしりなど、特定の行動を習慣的に繰り返すことをいいます。乳幼児期から学童期にかけてよくみられ、多くは成長とともに自然に消えていきます。
こうした習癖のほとんどは、子どもが不安や緊張を感じたときに、体が自然にとる反応です。意識的にやっているわけではなく、感情の波を無意識のうちにやり過ごそうとする行動と考えられています。
近年、これらの習癖は「身体集中反復行動(Body-Focused Repetitive Behaviors: BFRB)」と総称されるようになっています。軽度のものは日常的によくある行動ですが、行動が極端であったり長期間続いたりする場合は、病院を受診していただくとよいかもしれません。

2.症状

代表的な症状には以下のようなものがあります。

1. 爪かみ
2. 指しゃぶり
3. 舌なめずり
4. 鼻ほじり
5. 抜毛
6. その他(皮膚むしりなど)

3.原因・背景

習癖異常は、特定の一つの原因によって起きるものではなく、遺伝的な素因・脳の働きの特性・生活環境といった複数の要因が重なって生じると考えられています。
近年とくに注目されているのは、習癖と「感情の調整」との関係です。習癖行動は、不安や緊張、恐れといった感情が高まったときに、それを和らげる手段として自然に身についていくことが多いとされています。つまり、子どもにとってその行動は「感情をしずめるための方法」として機能しているのです。

4.診断

いつ頃から始まったのか、どのような癖があるのか、どのような場面で出やすいのか、一日どのくらいみられるのかなどをお聞きします。あわせて、お子さまが日常生活の中でどのような不安や緊張を感じているかについても、学校生活を含めて詳しくお話を伺います。
他の疾患との鑑別を行ったうえで、診察所見も含めて総合的に判断します。

5.治療

習癖行動は「感情をしずめるための手段」として身についたものであるため、「やめさせる」ことを直接の目標にすると、かえって改善しにくくなります。治療の基本は、そもそも強い感情がわきにくい環境を整えることと、感情がわいたときにもうまく扱えるようになることの、二つです。

保護者の方へ
ご家庭での関わり方は回復に大きく影響します。以下の点を意識していただくことが助けになります。

  1. 習癖に注目しない 叱ることは、かえって不安や緊張を招き、習癖を強めてしまいます。習癖に気づいても、やめさせようとせずにそのまま見ておきましょう。
  2. 充実した生活を 習癖そのものではなく、お子さまが毎日を楽しく、安心して過ごせているかどうかに目を向けてください。安心できる家庭で、充実した生活を送っていると、不安や緊張はやわらぎ、自然に習癖は軽くなっていきます。
  3. 不安や緊張のサインとしてとらえる 習癖が増えてきたときは、お子さまは「しずめないといけない感情」が高まっているのかもしれません。お子さまの不安や緊張が高まるできごとがなかったか、振り返ってみましょう。

状況によっては、生活環境の見直しや、学校との連携など、さらに具体的な対応を一緒に考えることもあります。

6.心理療法

心理療法により、不安や緊張から解放されることで、習癖に頼らなくてもよくなります。具体的には以下のような方法があります。

1)習慣逆転法(Habit Reversal Training: HRT)
習癖が起きそうになる感覚(前駆衝動)に気づき、その瞬間に別の行動に意識的に置き換えることで、習癖を徐々に軽減していくものです。

2)マインドフルネス
自分の感情の動きに気づき、それに振り回されずに対処する力を育てることを目標とした介入です。習慣逆転法と組み合わせて用いられることもあります。

7.薬物療法

薬物が使われることはありますが、現時点での薬物療法の効果は限定的とされています。

 

(四国こどもとおとなの医療センター 牛田 美幸 )

〒606-8305 京都市左京区吉田河原町14
京都技術科学センター
日本小児心身医学会事務局
TEL:075-746-2370 FAX:075-746-2380