第6回日本小児心身医学会北海道地方会 特別講演(2)
トウレット障害の薬物療法とその限界
金生由紀子先生(東京大学医学部付属病院「こころの発達」診療部)
トウレット障害は、多様性の運動チック及び音声チックが1年以上持続するチック障害であると同時に、強迫性障害(OCD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)をはじめとする併発症をしばしば伴う。10歳代半ばまでにチックをせずにいられないという抵抗しがたい感覚である前駆衝動が確認できるようになることが多い。典型的な強迫行為は不安を解消するために行うのに対して、トウレット障害では“まさにぴったり”という感覚が得られるまで行動することが特徴的である。また、状況にはとても過度または不適切にひどく腹を立ててコントロールできなくなる“怒り発作”を認めて生活に支障をきたすことも少なくない。
トウレット障害の治療の基本は、心理教育や家族ガイダンス及び環境調整である。最近では認知行動療法的アプローチが見直され、チックを意識してコントロールすることを身につけていくと前駆衝動が軽快すると期待される。薬物療法は、このような方法だけでは対応できないチックの治療の柱であると同時に、チックを考慮しつつ併発症を標的に行われることも少なくない。アメリカトウレット協会医療アドバイス委員会によると、チックに対して最もエビデンスのある薬物は、ハロペリドール、ピモジド、リスペリドンである。より新しい非定型抗精神病薬の報告も増しており、その中でもdopamine system stabilizerであるアリピプラゾールが注目されている。トウレット障害に併発するOCDでも典型的なOCDと同様にまずセロトニン再取り込み阻害薬を十分に使用することが望ましいが、それで効果が乏しければ抗精神病薬の併用を考える。トウレット障害に併発するADHDにはメチルフェニデートが禁忌とされる一方、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であるアトモキセチンがADHD症状のみならずチックも改善するとの報告がある。
チックと併発症を十分に理解した上で、効果と安全性を総合的に判断しながら薬物療法と非薬物療法を組み合わせることが重要である。

